「ソフトウェア・アーキテクト」のAは小文字だけ。それで満足せよ。
著者: バリー・ホーキンスソフトウェア開発の世界では、少し前から残念な傾向が目立ってきています。それは、ソフトウェア・アーキテクチャーの仕事を、古くからのアーキテクチャ一、つまり建築と同等のプロフェッショナルな仕事として確立しようという動きです。この動きは、同僚や雇い主から認められるだけでは飽きたらず、もっと公に成果を認めてもらいたいということから来ているようです。面白いことに、建築自体は、少なくとも千年以上も前から行われていることなのに、19世紀末になるまでプロの仕事とは認められていませんでした。それと比べると、一部のソフトウェア・アーキテクトは少しがつがつしていると言っても、誇張にはならないでしょう。
ソフトウェア・アーキテクチャーは技術であり、この分野で成功をつかむためには規律と訓練が必要なことは確かです。とはいえ、ソフトウェア開発はまだ生まれたばかりの仕事です。プロの仕事として確立するほど、この仕事についての知識はまだ蓄積されていません。このように幼い仕事でありながら、ソフトウェア開発が生み出した成果は、高い価値を持つツールとなっています。そのため、この道を極めた個人(および極めたと認められたい人々)は、医師、会計士、弁護士などのもっとも専門性の高いプロと同水準の収入を手にしています。
ソフトウェア開発の仕事をしている人々は、非常にクリエイティブで発見的な仕事をして高い収入を享受しています。私たちの労働は、多くの重要な成果を生み出し、一部は全人類のために役立つています。しかし、私たちの仕事に対する参入障壁は、実力とチャンスだけです。本物のプロの仕事は、本格的な教育訓練のプログラムを持っていますが、それと比べるとこの分野のプログラムは貧弱なものです。このことについてじっくり考え、私たちをプロとして認めよという言い分にどれだけの正当性があるのかを考えた方がよいのではないでしょうか。弁護士、医師、建築家と肩を並べるだけのプロとしてソフトウェア・アーキテクトを認めよという主張がいかに性急なものかが明らかになるはずです。
ソフトウェア・アーキテクトの肩書きに含まれているのは、小文字のaだけです。それで満足しなければなりません。