勤勉さが必要

アーキテクトの仕事は、問題を解決する力や工夫する力が重要な意味を持つ仕事として描かれることが多いようです。確かに、工夫する力は、成功をつかんだ、アーキテクトの重要な特徴です。しかし、アーキテクトとして成功するために同じくらい重要な特徴があります。勤勉きです。勤勉さは、さまざまな形で姿を現しますが、究極的には、1つ1つの仕事、システムのアーキテクチャー上の目標を尊重し、適切な注意を払っていることが感じられるかどうかです。

勤勉さは、ごく普通のことと深く関わっています。よくできたアーキテクチャーは、ごく普通のことの積み重ねです。有能なアーキテクトの多くは、知識としては知っているものの、習慣として実践できているわけではないことを思い出すために、毎日、毎週のチェックリストを作り、それに従うようにしています。この種のチェックリストやメモがないと、アーキテクトはすぐに原則から逸脱して、だらりとした時間を過ごしてしまいます。勤勉さに欠けているために、アーキテクチャーは、学問的によく知られている原則をゆがめたり破ったりしたものになっています。そのため、開発は目立った前進もなく停滞するようになってしまいます。失敗したプロジェクトを振り返ってみると、失敗したのは、能力がないからではなく、勤勉さと危機窓識が欠けていたからだということがわかります。このことはしっかりと押さえておくべきことです。

勤勉であるためには、一見ごく単純なことですが、約束事を作り、それを守ることが必要です。約束事はまちまちで範囲が広く、さまざまな義務や禁止事項が含まれます。たとえば、次のようなものです。

  • 顧客の予算上、日程上の制約を尊重する。
  • アーキテクトが楽しめる仕事だけではなく、アーキテクトを有能にするすべての仕事をする。
  • 開発プロセス/メソドロジーを取り入れる。
  • 責任を引き受ける

アトウール・ガワンデの『ベター:外科医の仕事についてのメモ』は、医療の現場における勤勉さについて、次のように語っています。

医療の世界で本当に成功を収めるのは容易なことではない。強い意志と細部への注意、創造力が必要である。しかし、インドで私が学んだのは、どこでも誰によってでも医療行為は可能だということだ。インド以上に条件の難しいところはほとんどないはずだが、それでも目を瞠るような成功がある。私が見たことを一言で言えば、ベターであることは可能だ、ということだ。天才はいらないの勤勉さ、明確な倫理意識、創意工夫、そして何よりも、精いっぱいのことをするという意志が必要だ。