本当の顧客は目の前の顧客ではない
著者: イーベン・ヒューイットソフトウェアを設計するための要件策定会議に出席するときには、あなたの顧客が本当はあなたの顧客ではないという考えで臨みましょう。これは実に簡単なことです。なぜなら、実際にそうだからです。
あなたの顧客はあなたの顧客ではありません。あなたの本当の 顧客は、あなたの顧客の顧客です。あなたの顧客の顧客が成功すれば、あなたの顧客が成功します。そうすれば、あなたも成功するのです。
eコマース・アプリケーションを書いているときには、サイトでショッピングするような人々にとって必要になるはずのことに神経を使います。たとえば、データ送信のセキュリティ、保存されたデータの暗号化といったことが必要になるはずですが、あなたの顧客はこれらの要件を口にしないかもしれません。顧客の顧符が必要とすることに顧客が触れない場合には、そのことに触れ、理由を説明するべきです。
顧客の顧客にとって大切なことを顧客が意識的に無視するようなら(ときどきあります)、プロジェクトから手を引くことを考えた方がよいでしょう。顧客がSSLのために毎年コストをかけるのを嫌い、構築のためのコストがかからないからといってプレーンテキストでクレジットカード番号を格納したがるようであれば、簡単にそれを受け入れてはいけません。間違っているとわかっていることに同意して仕事を進めれば、顧客の顧客を傷つけることになります。
要件策定会議は、実装会議ではありません。よく知られている問題であるとか、絶対に必要だということでない限り、顧客には実装上の用語を使うのを控えてもらうようにしましょう。解決策について指図してもらったり、まして専門用語を使って話をしてもらったりするのではなく、顧客には、理想とか、コンセプトや目標だけを語ってもらうようにすべきです。
では、会議でそのような規律を維持するためにはどうすればよいのでしょうか。難しそうに見えるでしょうか。要するに、大切なのは顧客の顧符だということを忘れないことです。確かにあなたの報酬を支払っているのはあなたの顧客ですが、顧客が必要だと言っているものでなく、顧客にとって本当に必要なものを作れるために、最善を尽くす必要があるということをはっきりさせるのです。もちろん、そのためには時間をかけて話し合いをしなければなりませんし、あなたが何をしていてぜそれをしているのかをはっきりさせなければなりません。
おそらく、人生の多くのことと同様に、詩の力を借りれば、このことをうまく表現できるでしょう。1649年にリチヤード・ラヴレイスが書いた「戦場に赴くにあたって、ルーカスタへ」の最後の行は、「あなた以上に名誉を大切に思っていなければ、あなたをここまで愛してはいないだろう。」となっています。
「あなた以上にあなたの顧客を大切に思わなければ、あなたをここまで大切にはできていないだろう。」